焦点:米長期金利3%突破、リスク資産離れの「前兆」か 2018年4月25日 / 08:36
・米長期金利が3%を突破したことで、リスク資産から債券に資金を移行させることを積極的に考え始める可能性
・長期金利が3%を超えたのは4年余りぶり
・「10年債とそれより長期のゾーンの利回り上昇は、ずっと目にしてこなかった規模のリアルマネーを呼び込むだろう」メアリー・アン・ハーリー氏
・長期金利は昨年末時点の2.41%からじりじりと上がり続けてきた
・そして3%を上回ると、米国株急落につながり、S&P総合500種は年初来1.4%下落と再びマイナス圏に転落した
・もっとも今は米企業決算発表シーズンが佳境を迎え、業績が7年余りぶりの好調さになる見込み
・「3%が必ずしも債券の買い場とは考えていない。景気が拡大を続け、業績が前年比で約20%も増加しようかという局面で、投資家が株式を見捨てるべきだとも思わない」アラン・ゲイル社長
・「株式と債券に激しい競合が存在するとはまだ考えていない。われわれが話題にする3%前後の10年債利回りは、物価調整後では1%になる」ジェーソン・ウェア最高投資責任者
<全文>
[ニューヨーク 24日 ロイター] - 米長期金利(10年国債利回り)が重要な節目の3%を突破したことで、ポートフォリオマネジャーが株式や新興国市場といったリスク資産から債券に資金を移行させることを積極的に考え始める可能性が出てきた。
長期金利が3%を超えたのは4年余りぶり。物価上振れの兆しや、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ路線にブレーキをかけそうにない様子を、投資家が警戒していることが背景にある。
金利上昇はとりわけ株式にいくつかの問題をもたらしている。借り入れコストが上がれば、9年にわたる株式の強気相場を支えてきた企業利益のしっかりした伸びが崩されかねない。
ただそれと同じぐらい重要なのは、債券利回りの上昇によって金融危機以降長らく見られなかった、より安全に収益を得られる投資先が出現したことだ。もはや株式だけが投資の選択肢ではなくなった。
DAダビッドソンの債券担当バイスプレジデント、メアリー・アン・ハーリー氏は「最近見られる(金利)上昇が債券を一部の株式より魅力的にしている。特になかなか値上がりしない株式に対してだ。10年債とそれより長期のゾーンの利回り上昇は、ずっと目にしてこなかった規模のリアルマネーを呼び込むだろう」と話した。
<広がる波紋>
長期金利は昨年末時点の2.41%からじりじりと上がり続けてきた。そして3%を上回ると、投資家が株式に付随するリスクの増大に注目したため、米国株急落につながり、S&P総合500種は年初来1.4%下落と再びマイナス圏に転落した。
キャンター・フィッツジェラルドの金利ストラテジスト、ジャスティン・レデラー氏は長期金利の3%について「世界の金融市場において意味の大きい水準で、心理的に重要な節目だ」と指摘する。
米国株以外のリスク資産にとっても、長期金利高騰は脅威となっている。投資適格社債と高利回り社債は現在、ともに年初来で価格がマイナスになった。また投資家がより安全な米国債に資金を移すことを検討する中で、新興国市場にも波紋が広がっているようだ。MSCIとJPモルガンが算出する新興国の株式と債券の指数は、それぞれ2カ月ぶりの低水準に沈んだ。
コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジのチーフ市場アナリスト、オマー・エシナー氏は「少なくとも通貨の世界では、米国債利回り上昇はリスク資産、中でも高利回り商品と新興国通貨に深刻な打撃を与える」と述べた。
<なお低い実質利回り>
もっとも今は米企業決算発表シーズンが佳境を迎え、業績が7年余りぶりの好調さになる見込みであるだけに、すべての投資家が長期金利の3%突破を資金シフトの機会とみなしているわけではない。
バイア・ノバ・インベストメント・マネジメントのアラン・ゲイル社長は「3%が必ずしも債券の買い場とは考えていない。景気が拡大を続け、業績が前年比で約20%も増加しようかという局面で、投資家が株式を見捨てるべきだとも思わない」と強調した。
アルビオン・ファイナンシャル・グループのジェーソン・ウェア最高投資責任者も、予想リターンを考慮すれば、株式は比較的妙味を持ち続けるように見えるという見解だ。特に物価調整後のいわゆる「実質利回り」に目を向ければ、そうした主張には妥当性が出てくる。
ウェア氏は「資産配分決定の観点からは(株式と債券に)激しい競合が存在するとはまだ考えていない。われわれが話題にする3%前後の10年債利回りは、物価調整後では1%になる」と説明した。
一部の投資家は、長期金利が節目を突破したことよりも、現状からどう動いていくかに注目している。
ベアードの投資ストラテジスト、ウィリー・デルウィシュ氏は「3%に何か特別な魅力があるとは思えない。もしこの水準から金利が急上昇すれば、株式と経済には逆風になるが、ゆっくりと上がっていくなら、逆風ととらえる理由は見当たらない」と語った。
(Lewis Krauskopf記者)
・長期金利が3%を超えたのは4年余りぶり
・「10年債とそれより長期のゾーンの利回り上昇は、ずっと目にしてこなかった規模のリアルマネーを呼び込むだろう」メアリー・アン・ハーリー氏
・長期金利は昨年末時点の2.41%からじりじりと上がり続けてきた
・そして3%を上回ると、米国株急落につながり、S&P総合500種は年初来1.4%下落と再びマイナス圏に転落した
・もっとも今は米企業決算発表シーズンが佳境を迎え、業績が7年余りぶりの好調さになる見込み
・「3%が必ずしも債券の買い場とは考えていない。景気が拡大を続け、業績が前年比で約20%も増加しようかという局面で、投資家が株式を見捨てるべきだとも思わない」アラン・ゲイル社長
・「株式と債券に激しい競合が存在するとはまだ考えていない。われわれが話題にする3%前後の10年債利回りは、物価調整後では1%になる」ジェーソン・ウェア最高投資責任者
<全文>
[ニューヨーク 24日 ロイター] - 米長期金利(10年国債利回り)が重要な節目の3%を突破したことで、ポートフォリオマネジャーが株式や新興国市場といったリスク資産から債券に資金を移行させることを積極的に考え始める可能性が出てきた。
長期金利が3%を超えたのは4年余りぶり。物価上振れの兆しや、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ路線にブレーキをかけそうにない様子を、投資家が警戒していることが背景にある。
金利上昇はとりわけ株式にいくつかの問題をもたらしている。借り入れコストが上がれば、9年にわたる株式の強気相場を支えてきた企業利益のしっかりした伸びが崩されかねない。
ただそれと同じぐらい重要なのは、債券利回りの上昇によって金融危機以降長らく見られなかった、より安全に収益を得られる投資先が出現したことだ。もはや株式だけが投資の選択肢ではなくなった。
DAダビッドソンの債券担当バイスプレジデント、メアリー・アン・ハーリー氏は「最近見られる(金利)上昇が債券を一部の株式より魅力的にしている。特になかなか値上がりしない株式に対してだ。10年債とそれより長期のゾーンの利回り上昇は、ずっと目にしてこなかった規模のリアルマネーを呼び込むだろう」と話した。
<広がる波紋>
長期金利は昨年末時点の2.41%からじりじりと上がり続けてきた。そして3%を上回ると、投資家が株式に付随するリスクの増大に注目したため、米国株急落につながり、S&P総合500種は年初来1.4%下落と再びマイナス圏に転落した。
キャンター・フィッツジェラルドの金利ストラテジスト、ジャスティン・レデラー氏は長期金利の3%について「世界の金融市場において意味の大きい水準で、心理的に重要な節目だ」と指摘する。
米国株以外のリスク資産にとっても、長期金利高騰は脅威となっている。投資適格社債と高利回り社債は現在、ともに年初来で価格がマイナスになった。また投資家がより安全な米国債に資金を移すことを検討する中で、新興国市場にも波紋が広がっているようだ。MSCIとJPモルガンが算出する新興国の株式と債券の指数は、それぞれ2カ月ぶりの低水準に沈んだ。
コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジのチーフ市場アナリスト、オマー・エシナー氏は「少なくとも通貨の世界では、米国債利回り上昇はリスク資産、中でも高利回り商品と新興国通貨に深刻な打撃を与える」と述べた。
<なお低い実質利回り>
もっとも今は米企業決算発表シーズンが佳境を迎え、業績が7年余りぶりの好調さになる見込みであるだけに、すべての投資家が長期金利の3%突破を資金シフトの機会とみなしているわけではない。
バイア・ノバ・インベストメント・マネジメントのアラン・ゲイル社長は「3%が必ずしも債券の買い場とは考えていない。景気が拡大を続け、業績が前年比で約20%も増加しようかという局面で、投資家が株式を見捨てるべきだとも思わない」と強調した。
アルビオン・ファイナンシャル・グループのジェーソン・ウェア最高投資責任者も、予想リターンを考慮すれば、株式は比較的妙味を持ち続けるように見えるという見解だ。特に物価調整後のいわゆる「実質利回り」に目を向ければ、そうした主張には妥当性が出てくる。
ウェア氏は「資産配分決定の観点からは(株式と債券に)激しい競合が存在するとはまだ考えていない。われわれが話題にする3%前後の10年債利回りは、物価調整後では1%になる」と説明した。
一部の投資家は、長期金利が節目を突破したことよりも、現状からどう動いていくかに注目している。
ベアードの投資ストラテジスト、ウィリー・デルウィシュ氏は「3%に何か特別な魅力があるとは思えない。もしこの水準から金利が急上昇すれば、株式と経済には逆風になるが、ゆっくりと上がっていくなら、逆風ととらえる理由は見当たらない」と語った。
(Lewis Krauskopf記者)
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